波照間島における海洋深層水多目的利用の実現可能性
- 標題
- 波照間島における海洋深層水多目的利用の実現可能性
- 作者
- 大塚耕司(大阪府立大学)、飯尾圭祐(岩谷瓦斯㈱)
- 文件屬性
- 日本研究
- 知識分類
- 基礎研究
- 點閱數
- 3069
摘要
先般、久米島では深層水複合利用を目指した『久米島モデル』が発表された。ここでは海洋温度差発電(OTEC)を中核に深層水を多目的、多段階に利用することで、各事業でコストを分散し、採算性の向上を目指している。本研究では、このモデルを参考に、経済面、エネルギー面で恵まれていない離島のインフラを確立し、観光資源や雇用を創出するとともに、地域活性化にも繋げることを目的とし、沖縄県波照間島において、深層水複合利用を目指した事業のモデル構築を行う。また、そのモデルの経済性ならびに環境への影響を評価する。まず島の概要について自然・社会条件をそれぞれまとめる。それを基に、波照間島における、深層水取水地の検討を行なった後、実際の街づくり計画のコンセプトに従い、利用方法についての提案を行う。さらに、経済面、環境面での評価を行い、事業の実現可能性について考察する。波照間島において提案する事業モデルは、久米島モデルを参考に構築した。ここでは、取水、OTEC、淡水製造、水産利用、農業利用、水素製造、水素ステーション、の各システムを設定し、
水産利用ではアワビとその餌海藻の養殖を、農業利用ではマンゴー栽培を、それぞれ想定した。また、水素自動車の島内普及のため、水素製造・水素ステーション事業を提案した。各事業における年間収支を表1 に示す。OTEC、農業利用、水素製造事業では黒字、取水、水産利用、海水淡水化、水素ステーション事業では赤字という結果が出た。年間総収支では、約1.7 億円の赤字となった。
また、現状と事業実現後の燃料別CO2 排出量の比較を表2 に示す。現状では、年間CO2 総排出量は5,680t であるが、火力発電に代わり、深層水を利用して発電した電気を使用すると、火力発電分4,080t のCO2 を、普通自動車に代わり水素自動車が普及すると、揮発油(ガソリン)分281tのCO2 を削減することができる。一方海水中CO2濃度の高い深層水を汲み上げると、大気中に1,300t のCO2 が排出される。栄養塩豊富な深層水が海域に放流され、それがすべて生物に固定されるとしても、486t のCO2 が排出される。これらの差引を考えると、CO2 総削減量は、生物固定なしの場合3,060t、生物固定ありの場合3,880t となる。
水産利用ではアワビとその餌海藻の養殖を、農業利用ではマンゴー栽培を、それぞれ想定した。また、水素自動車の島内普及のため、水素製造・水素ステーション事業を提案した。各事業における年間収支を表1 に示す。OTEC、農業利用、水素製造事業では黒字、取水、水産利用、海水淡水化、水素ステーション事業では赤字という結果が出た。年間総収支では、約1.7 億円の赤字となった。
また、現状と事業実現後の燃料別CO2 排出量の比較を表2 に示す。現状では、年間CO2 総排出量は5,680t であるが、火力発電に代わり、深層水を利用して発電した電気を使用すると、火力発電分4,080t のCO2 を、普通自動車に代わり水素自動車が普及すると、揮発油(ガソリン)分281tのCO2 を削減することができる。一方海水中CO2濃度の高い深層水を汲み上げると、大気中に1,300t のCO2 が排出される。栄養塩豊富な深層水が海域に放流され、それがすべて生物に固定されるとしても、486t のCO2 が排出される。これらの差引を考えると、CO2 総削減量は、生物固定なしの場合3,060t、生物固定ありの場合3,880t となる。