沖縄県海洋深層水研究所の新たな取組
- 標題
- 沖縄県海洋深層水研究所の新たな取組
- 作者
- 鹿熊 信一郎(沖縄県海洋深層水研究所)
- 文件屬性
- 日本研究
- 知識分類
- 基礎研究
- 點閱數
- 5375
摘要
1.夏エビ出荷
久米島モデルは、深層水取水量を今の約8 倍の10 万トンに増やし、海洋温度差発電を核として、その排水を水産業・農業などで多段利用していくものである。クルマエビ養殖は、多段利用の有力な候補となっている。現在、深層水はウイルスフリー稚エビの生産に主に利用されているが、価格の高い夏場に深層水を利用して成エビを飼育・出荷することが検討されている(築地では2012-14 年の平均で6-9 月7711円/kg、10-5 月5908 円)。本年8 月に予備試験を実施したところ、輸送中の温度管理に課題があるものの、平均8300 円/kg と高値がついた。
2.水産物加工場での深層水利用
本年7 月26 日に、総工費4 億6 千万円の「久米島町水産物加工処理施設及び海業支援施設」が落成した。ここに鮮度保持用の深層水(110円/トン)を送り、モズクとアーサ(ヒトエグサ)の洗浄に利用している。モズクは、深層水中の一般細菌が極端に少ないことが評価され、通常200 円/kg のものを380 円/kg で100 トン受注した。アーサについても、細菌数とともに、低温のため洗浄中に品質が劣化しないことが評価されている。
3.泡盛製造における深層水利用
本年10 月5 日、沖縄県内泡盛製造会社・沖縄県工業技術センター・沖縄県海洋深層水研究所は、泡盛製造過程で海洋深層水を添加するとアルコール発酵を促進し香味が良くなることをプレス発表した。同時に海洋深層水を利用した泡盛新製品も発表された。酒造法上の取り扱いから発表がかなり遅れたが、今後、これまで沖縄で弱かった海洋深層水の工業利用に弾みがつくと期待される。
4.サンゴの種苗生産と高栄養塩対策
平成28 年度より、(一社)水産土木建設技術センターとの共同研究で、有性生殖法によるサンゴの種苗生産を行っている。本研究所の役割の一つは、深層水がサンゴの種苗生産に与える影響を調べることである。1)熱交換で冷やした表層水、2)深層水を混ぜて冷やした表層水、3)熱交換で暖めた深層水で稚サンゴを飼育している。これまでのところ、1)2)3)の順に生残率が高い。理由は栄養塩濃度の違いと考えられる。深層水に含まれる高濃度の栄養塩は、海藻の養殖には適しているが、いくつかの理由からサンゴの生育には適さない。ハワイでは深層水の排水に厳しい規制がかかっている。久米島モデルが実現した場合、10 万トンの深層水の排水には十分な配慮が必要となる。成長が速く餌料転換効率が高い海藻を培養して栄養塩を回収し、これを餌料として、今沖縄で資源が激減しているシラヒゲウニやアワビ・トコブシ等を養殖する方向も検討する必要がある。本年夏は海水温が高く、久米島では大規模なサンゴの白化現象で大きな被害を受けた。久米島産サンゴの種苗生産を行う目的の一つは、将来、久米島でサンゴの移植(植付け)を行うことである。しかし、現状では移植できるサンゴの数は少ない。今後の対応として、遺伝的に多様なサンゴの密植による幼生供給基地の造成技術を開発すること、サンゴ移植の普及・教育効果により赤土・栄養塩対策を強化することがあげられる。本年、久米島の小学生を対象に研究所内でサンゴの産卵観察会を開いたが、これも普及・教育活動の一環である。
久米島モデルは、深層水取水量を今の約8 倍の10 万トンに増やし、海洋温度差発電を核として、その排水を水産業・農業などで多段利用していくものである。クルマエビ養殖は、多段利用の有力な候補となっている。現在、深層水はウイルスフリー稚エビの生産に主に利用されているが、価格の高い夏場に深層水を利用して成エビを飼育・出荷することが検討されている(築地では2012-14 年の平均で6-9 月7711円/kg、10-5 月5908 円)。本年8 月に予備試験を実施したところ、輸送中の温度管理に課題があるものの、平均8300 円/kg と高値がついた。
2.水産物加工場での深層水利用
本年7 月26 日に、総工費4 億6 千万円の「久米島町水産物加工処理施設及び海業支援施設」が落成した。ここに鮮度保持用の深層水(110円/トン)を送り、モズクとアーサ(ヒトエグサ)の洗浄に利用している。モズクは、深層水中の一般細菌が極端に少ないことが評価され、通常200 円/kg のものを380 円/kg で100 トン受注した。アーサについても、細菌数とともに、低温のため洗浄中に品質が劣化しないことが評価されている。
3.泡盛製造における深層水利用
本年10 月5 日、沖縄県内泡盛製造会社・沖縄県工業技術センター・沖縄県海洋深層水研究所は、泡盛製造過程で海洋深層水を添加するとアルコール発酵を促進し香味が良くなることをプレス発表した。同時に海洋深層水を利用した泡盛新製品も発表された。酒造法上の取り扱いから発表がかなり遅れたが、今後、これまで沖縄で弱かった海洋深層水の工業利用に弾みがつくと期待される。
4.サンゴの種苗生産と高栄養塩対策
平成28 年度より、(一社)水産土木建設技術センターとの共同研究で、有性生殖法によるサンゴの種苗生産を行っている。本研究所の役割の一つは、深層水がサンゴの種苗生産に与える影響を調べることである。1)熱交換で冷やした表層水、2)深層水を混ぜて冷やした表層水、3)熱交換で暖めた深層水で稚サンゴを飼育している。これまでのところ、1)2)3)の順に生残率が高い。理由は栄養塩濃度の違いと考えられる。深層水に含まれる高濃度の栄養塩は、海藻の養殖には適しているが、いくつかの理由からサンゴの生育には適さない。ハワイでは深層水の排水に厳しい規制がかかっている。久米島モデルが実現した場合、10 万トンの深層水の排水には十分な配慮が必要となる。成長が速く餌料転換効率が高い海藻を培養して栄養塩を回収し、これを餌料として、今沖縄で資源が激減しているシラヒゲウニやアワビ・トコブシ等を養殖する方向も検討する必要がある。本年夏は海水温が高く、久米島では大規模なサンゴの白化現象で大きな被害を受けた。久米島産サンゴの種苗生産を行う目的の一つは、将来、久米島でサンゴの移植(植付け)を行うことである。しかし、現状では移植できるサンゴの数は少ない。今後の対応として、遺伝的に多様なサンゴの密植による幼生供給基地の造成技術を開発すること、サンゴ移植の普及・教育効果により赤土・栄養塩対策を強化することがあげられる。本年、久米島の小学生を対象に研究所内でサンゴの産卵観察会を開いたが、これも普及・教育活動の一環である。