久米島真謝漁港における海洋深層水を使った藻場造成実海域実験
- 標題
- 久米島真謝漁港における海洋深層水を使った藻場造成実海域実験
- 作者
- 大内一之(㈱大内海洋コンサルタント)、 倉橋みどり・多部田 茂(東京大学)、井関和夫(広島大学)、渋谷正信(㈱渋谷潜水工業)
- 文件屬性
- 日本研究
- 知識分類
- 水產養殖
- 點閱數
- 3478
摘要
海洋深層水の水産養殖業への利用に関しては、これまでに久米島における車エビ・海ブドウなど事業化された成功例があるが、これらは本質的には深層水の低温性を養殖池等の水温調整のために使われているものが多く、栄養塩そのものを積極的に一次生産増大に結び付けるものは少なかった。一方、海洋深層水の栄養塩を利用した水産生物の育成では餌は必要とせず、深層水だけを与えて海藻を育てることができ、その海藻を餌に植食性魚類や貝類を育てることができるため、深層水のみでタンパク質食料の増産が可能である。これまでの深層水の栄養塩を使った水産養殖事業化の成功例は、室戸のアオノリやハワイ島NELHA のアワビのように、いずれも陸上での水槽や池を利用した閉鎖系の中で最適条件を与えて育成する、陸上養殖の場合のみであったといえる。これを漁港や湾のような半閉鎖系の広大な実海域でコストを低くして行うことは、将来の食料問題の解決のための手段として大いに期待される技術と思われる。本研究では、沖縄県久米島にある海洋温度差海洋深層水発電所(OTEC)から排水された海洋深層水を、近隣の波の静かな真謝漁港内海底に設置したコンテナに注入・滞留させ、海洋深層水の低温性と豊富な栄養塩により、ワカメなどの寒地系の海藻を沖縄の海で育成することにより、深層水による実海域での一次生産の可能性についての検討を行った。ワカメの種苗を5 か月間、水温約14℃、栄養塩濃度16~19μmol/L に保持したコンテナ内で育成した結果、良好な生長が観測された。下図に生長の時刻歴を示す。ここで、Patch Area は海底に生えているワカメ1 株の上方から見た投影面積を表す。