海水の有効利用-塩の晶析における温度依存性
- 標題
- 海水の有効利用-塩の晶析における温度依存性
- 作者
- 久松 純平, 池田 進
- 文件屬性
- 日本研究
- 知識分類
- 食品應用
- 出版年
- 2010
- 刊名
- 日本海水学会誌
- 卷
- 64
- 期
- 5
- 頁
- P 250-255
- 點閱數
- 5798
摘要
資源に乏しい日本にとって,資源の確保は重要課題である.陸上にある鉱山や地下の資源などには限りがあり,近い将来,高コストでの資源確保が到来するのは確実である.そこで,海に目を向けてみると海水にはハロゲン,アルカリ土類金属,アルカリ金属,金属,希少金属,ウランなど様々な元素が(80 種類以上)含まれている.このように,さまざまな元素を含んでいる海水からの選択的な元素の分離・回収が可能ならば資源の枯渇は解消されるのではないかと考えられる.特に,海水から選択的に分離・回収した希少物質は金属工業,電子産業,食品,医薬品など様々な分野で幅広く利用できる 1-3).現在,福岡市や沖縄県には国内最大規模の淡水化施設が稼働している.福岡市の淡水化施設 4)では逆浸透膜法によって海水から真水を一日最大 5万トン生産している.このとき,海水の 6 割は真水として採水することができるが,残りの 4 割は濃縮海水(海水濃度が約 2 倍)として廃棄されている.廃棄される濃縮海水の一部は下水処理水や浄化処理水などと混ぜられて海に放流され,大部分はそのまま海に廃棄されている.濃縮海水の大量廃棄は湾岸地域の環境に悪影響を及ぼす可能性が危惧されているので,淡水化施設から廃棄される濃縮海水の環境負荷低減に繋がる有効利用を考える必要がある.そこで,本解説では海水に最も多く含有する塩の晶析における温度依存性について述べる.