新規凍結濃縮装置による海洋深層水からの ミネラル高濃度液(20wt%以上)の生産
- 標題
- 新規凍結濃縮装置による海洋深層水からの ミネラル高濃度液(20wt%以上)の生産
- 作者
- 手塚正博・城昌治・木村三男(ICE2.0 LLC)
- 文件屬性
- 日本研究
- 知識分類
- 礦物質分離
- 點閱數
- 3394
摘要
1.背景
1.1 基本栄養素としてのCaCa は人体(生体)のほとんど全ての機能に関係する基本栄養素である。このためCa の不足は非常に多くの重要な疾患の原因となっている(急増する心筋梗塞、動脈硬化及び骨粗しょう症等々)。左記Ca は日本人にとって最も不足とされている必須ミネラル成分であり、またCa の摂取には他の必須ミネラル成分とのミネラルバランスが必要とされている。1.2 海水の濃縮技術海水は人体のミネラルバランスに近く優れた天然のミネラル液の供給源となり得る。海水の濃縮には海水の省エネルギな淡水化技術としてのフラッシュ蒸発法及びRO膜法がある。しかし、海水(塩分濃度3.5wt%)の淡水化の場合、淡水化の残液となる濃縮液の塩分濃度は低く7wt%以下である。左記濃度以上の濃縮液を得るためにはCaSO4析出及び消費エネルギ増大の問題が生じる事になる。また、NF膜を用い海水からSO4を除去し(Ca SO4析出の防止)、そのSO4の除去された液をRO膜により濃縮する技術がある。しかし濃縮限界濃度及びNF膜の溶質回収率(=利用液溶質量/原液溶質量)等に課題を抱える。1.3 凍結による海水の高濃度濃縮とCaの保持凍結による濃縮は、溶質の均一な濃縮及び省エネルギ性に特性を持つ。しかし、高濃度液への濃縮の場合、装置コストに課題を持つ。馬野(1958)は海水(塩分濃度3.5wt%、SO4 濃度0.27wt%、Ca 濃度0.42wt%)を凍結により濃縮して行く場合、濃縮液の塩分濃度約9.8wt%(SO4 濃度約0.7wt%、Ca 濃度約0.17wt%、氷点約-6℃)かNa2SO4-10H2O の析出が起こり、濃縮液の濃度の上昇(氷点の降下)と伴にSO4 濃度が急激に低下することを記している。同時にSO4 濃度の低下によりCa濃度が増加する(濃縮液濃度に正確に比例する)ことを記している。
2.開発の凍結濃縮装置
本開発の凍結濃縮装置(特願2016-257966)は、氷液混合物を生成する冷却回転円筒氷生成機及び左記氷液混合物を氷と濃縮液に分離する差速掻き取り刃分離機から構成されている。試験の結果、原液塩分濃度3.1-3.4wt%において濃縮液塩分濃度8.9-11.9wt%、3.6-5.4wt%において9.8-15.9wt%、また溶質回収率はそれぞれ86%及び73%を得ている。さらに本装置は、装置の稼働条件(冷却回転円筒の冷却温度等)を変えて濃縮液を再度処理する事により、さらに高濃度の濃縮液を得ることが出来る。この複数回(2~3 回)処理により濃縮液の塩分濃度22wt%以上でCa 濃度を0.52wt%以上とする事が可能
となる。本報告では上記試験に用いた横型差速掻き取り刃分離機に変えて新規縦型の差速掻き取り刃分離機を提案する。左記分離機は処理量及び濃縮液への氷の混入等の問題を解決する。海洋深層水事業会社の多くはRO 膜及び電気透析膜設備を有している。本装置は、上記RO 膜からの濃縮廃液(塩分濃度約5wt%、処理液の約70%)の有効利用、また上記電気透析膜設備との併用によりCa/Mg=1~2(常用に優れている)の天然ミネラル濃縮液の生産が可能となる。
1.1 基本栄養素としてのCaCa は人体(生体)のほとんど全ての機能に関係する基本栄養素である。このためCa の不足は非常に多くの重要な疾患の原因となっている(急増する心筋梗塞、動脈硬化及び骨粗しょう症等々)。左記Ca は日本人にとって最も不足とされている必須ミネラル成分であり、またCa の摂取には他の必須ミネラル成分とのミネラルバランスが必要とされている。1.2 海水の濃縮技術海水は人体のミネラルバランスに近く優れた天然のミネラル液の供給源となり得る。海水の濃縮には海水の省エネルギな淡水化技術としてのフラッシュ蒸発法及びRO膜法がある。しかし、海水(塩分濃度3.5wt%)の淡水化の場合、淡水化の残液となる濃縮液の塩分濃度は低く7wt%以下である。左記濃度以上の濃縮液を得るためにはCaSO4析出及び消費エネルギ増大の問題が生じる事になる。また、NF膜を用い海水からSO4を除去し(Ca SO4析出の防止)、そのSO4の除去された液をRO膜により濃縮する技術がある。しかし濃縮限界濃度及びNF膜の溶質回収率(=利用液溶質量/原液溶質量)等に課題を抱える。1.3 凍結による海水の高濃度濃縮とCaの保持凍結による濃縮は、溶質の均一な濃縮及び省エネルギ性に特性を持つ。しかし、高濃度液への濃縮の場合、装置コストに課題を持つ。馬野(1958)は海水(塩分濃度3.5wt%、SO4 濃度0.27wt%、Ca 濃度0.42wt%)を凍結により濃縮して行く場合、濃縮液の塩分濃度約9.8wt%(SO4 濃度約0.7wt%、Ca 濃度約0.17wt%、氷点約-6℃)かNa2SO4-10H2O の析出が起こり、濃縮液の濃度の上昇(氷点の降下)と伴にSO4 濃度が急激に低下することを記している。同時にSO4 濃度の低下によりCa濃度が増加する(濃縮液濃度に正確に比例する)ことを記している。
2.開発の凍結濃縮装置
本開発の凍結濃縮装置(特願2016-257966)は、氷液混合物を生成する冷却回転円筒氷生成機及び左記氷液混合物を氷と濃縮液に分離する差速掻き取り刃分離機から構成されている。試験の結果、原液塩分濃度3.1-3.4wt%において濃縮液塩分濃度8.9-11.9wt%、3.6-5.4wt%において9.8-15.9wt%、また溶質回収率はそれぞれ86%及び73%を得ている。さらに本装置は、装置の稼働条件(冷却回転円筒の冷却温度等)を変えて濃縮液を再度処理する事により、さらに高濃度の濃縮液を得ることが出来る。この複数回(2~3 回)処理により濃縮液の塩分濃度22wt%以上でCa 濃度を0.52wt%以上とする事が可能
となる。本報告では上記試験に用いた横型差速掻き取り刃分離機に変えて新規縦型の差速掻き取り刃分離機を提案する。左記分離機は処理量及び濃縮液への氷の混入等の問題を解決する。海洋深層水事業会社の多くはRO 膜及び電気透析膜設備を有している。本装置は、上記RO 膜からの濃縮廃液(塩分濃度約5wt%、処理液の約70%)の有効利用、また上記電気透析膜設備との併用によりCa/Mg=1~2(常用に優れている)の天然ミネラル濃縮液の生産が可能となる。