伊豆赤沢海洋深層水から分離したVibrio gallaecicus が生産する 細胞賦活因子
- 標題
- 伊豆赤沢海洋深層水から分離したVibrio gallaecicus が生産する 細胞賦活因子
- 作者
- ○柴田雄次1), 齋藤美恵1), 山田勝久2), 寺原 猛1), 小林武志1), 今田千秋1)
- 文件屬性
- 日本研究
- 知識分類
- 礦物質分離
- 點閱數
- 3051
摘要
1.目的
近年ヒトの健康に微生物が深く関わっていることがわかりつつある1).そこで我々はヒトを構成する最小単位である細胞を用いて, これを活性化する微生物の探索を進めて来た.微生物の分離源としては, 既にユニークな微生物群集組成の存在が示唆されている海洋深層水(以後, DSW)を対象にスクリーニングした結果, 伊豆赤沢DSW より分離した海洋細菌Vibrio gallaecicus No. 265 株(以後, No. 265
株)に正常ヒト皮膚線維芽細胞(以後, NB1 細胞)に対する細胞賦活効果を見出した. そこで本研究では,このNo. 265 株が生産する細胞賦活因子を解明することを目的とした.
2.方法
グルコース・バクトペプトン培地でNo. 265株を20℃で20 時間回転振とう培養し, 遠心分離(16,770×g, 4℃, 10 分間)して得られた上清に飽和濃度の90%になるように硫酸アンモニウムを添加後, 24 時間撹拌して上清中のタンパク質を塩析した. 次にこれを遠心分離(10,730×g, 4℃, 40 分間)し, 得られた沈殿物を10mM トリス‐塩酸バッファー(pH 7.0)に溶解後, 透析膜(UC 36-32-100, エーディア)に移して24 時間透析を行った. この透析内液をさらに限外濾過し(分画分子量3kDa),得られた各分画物についてNB1 細胞による細胞賦活効果の追跡を行った. 細胞賦活効果が見られた画分はSDS-PAGE による分子量推定を行うとともに, Human bFGF ELISA キット(レイバイオテック)に供してbFGF との相関性を調べた.
3.結果および考察
本菌の培養上清を硫安塩析し, 透析した内液を限外濾過処理した結果, 3kDa 以上の画分に細胞賦活効果が認められたことから, 細胞賦活因子の分子量は3kDa 以上であると推定された. そこでこの因子がNB1 細胞の増殖因子として周知のbFGF の可能性が示唆されたため,SDS-PAGE およびELISA 法により相関性を調べた. その結果, SDS-PAGE では, 約3.5kDa,8.5kDa および38kDa にそれぞれバンドが出現し, bFGF の分子量である14-18kDa 付近にはバンドは見られなかった. さらにELISA 法によるタンパクレベルの検討においてもbFGF と抗原抗体反応を示さないことがわかった. 以上の結果からNo. 265 株が生産する細胞賦活因子はbFGF ではないことが示唆された. しかし,微生物が生産する細胞賦活因子に関する報告2)は極めて少なく, 本物質が新規物質である可能性が期待されるため, 今後さらにNo. 265
株が生産する細胞賦活因子の単離精製を続行し, 培養細胞への利用を視野に入れた詳細な研究を行いたいと考えている.
近年ヒトの健康に微生物が深く関わっていることがわかりつつある1).そこで我々はヒトを構成する最小単位である細胞を用いて, これを活性化する微生物の探索を進めて来た.微生物の分離源としては, 既にユニークな微生物群集組成の存在が示唆されている海洋深層水(以後, DSW)を対象にスクリーニングした結果, 伊豆赤沢DSW より分離した海洋細菌Vibrio gallaecicus No. 265 株(以後, No. 265
株)に正常ヒト皮膚線維芽細胞(以後, NB1 細胞)に対する細胞賦活効果を見出した. そこで本研究では,このNo. 265 株が生産する細胞賦活因子を解明することを目的とした.
2.方法
グルコース・バクトペプトン培地でNo. 265株を20℃で20 時間回転振とう培養し, 遠心分離(16,770×g, 4℃, 10 分間)して得られた上清に飽和濃度の90%になるように硫酸アンモニウムを添加後, 24 時間撹拌して上清中のタンパク質を塩析した. 次にこれを遠心分離(10,730×g, 4℃, 40 分間)し, 得られた沈殿物を10mM トリス‐塩酸バッファー(pH 7.0)に溶解後, 透析膜(UC 36-32-100, エーディア)に移して24 時間透析を行った. この透析内液をさらに限外濾過し(分画分子量3kDa),得られた各分画物についてNB1 細胞による細胞賦活効果の追跡を行った. 細胞賦活効果が見られた画分はSDS-PAGE による分子量推定を行うとともに, Human bFGF ELISA キット(レイバイオテック)に供してbFGF との相関性を調べた.
3.結果および考察
本菌の培養上清を硫安塩析し, 透析した内液を限外濾過処理した結果, 3kDa 以上の画分に細胞賦活効果が認められたことから, 細胞賦活因子の分子量は3kDa 以上であると推定された. そこでこの因子がNB1 細胞の増殖因子として周知のbFGF の可能性が示唆されたため,SDS-PAGE およびELISA 法により相関性を調べた. その結果, SDS-PAGE では, 約3.5kDa,8.5kDa および38kDa にそれぞれバンドが出現し, bFGF の分子量である14-18kDa 付近にはバンドは見られなかった. さらにELISA 法によるタンパクレベルの検討においてもbFGF と抗原抗体反応を示さないことがわかった. 以上の結果からNo. 265 株が生産する細胞賦活因子はbFGF ではないことが示唆された. しかし,微生物が生産する細胞賦活因子に関する報告2)は極めて少なく, 本物質が新規物質である可能性が期待されるため, 今後さらにNo. 265
株が生産する細胞賦活因子の単離精製を続行し, 培養細胞への利用を視野に入れた詳細な研究を行いたいと考えている.